訪問介護における調理ケアで高齢者の高血圧に気を付けたい点


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高血圧の利用者さんに調理ケアで気を付けるべきポイント

利用者さんには血圧が高い方も多いと思います。高齢になると血管の弾力性が
失われがちなことに加え、ホルモンのバランスも崩れやすくなってしまうことが原因です。
それに神経の反射も緩やかになり起きたとき・座っているところから立つとき体の位置が
変わるだけで血圧が大きく変わってしまいます。加齢によって血圧が上がりやすくなる傾向が
ありますが、高血圧の状態は食生活からも影響をうけています。
今回の記事では、ヘルパーが調理のケアに入るにあたって、気を付けるべきポイントに
ついて考えていきます。

1.まず高血圧になりやすい食生活ってどんなもの?

血圧を維持するには血管の軟らかさホルモンバランスもありますが、
血液がサラサラになっていることが大切です。ドロドロした血液では、血管の内側に汚れを
積み上げてしまい血管自体を硬くしてしまいます。そのため、調理でケアに入るとき、
血液がサラサラになるようなメニューを組むことが望ましいでしょう。
ドロドロ血液になりやすい食事は以下の成分が多く入っているものです。

・塩分が多い

血液の中に塩分が多いと血液が血管を通り抜けづらくなります。そのため体は血液を
流そうとして水分をたくさん血管の中に送り込みます。その結果、必要以上の水分が血管を流れて、
血管に大きな負担がかかり血圧が上がってしまいます。

・動物由来の脂質が多い

脂も血液の中を流れていて、必要に応じて体の中に分配されていきます。
しかし脂が過剰だと血管の壁に引っかかってしまいどんどん積もっていきます。
そのため血管が固くなり血圧が上がってしまうのです。逆に植物や魚由来の脂質では、
悪い脂を流してくれる作用があるので、積極的な摂取をお勧めします。

・野菜や海藻など体を整える成分が少ない

野菜や海藻に含まれているカルシウムやマグネシウム、食物繊維は血管の働きを
整えてくれる作用があります。これらが少ないと不要なものが増えてしまっても
外に出すことができず、血管に負担をかけてしまうのです。

2.高血圧ではなく低血圧なら大丈夫なの?

高齢の利用者さんたちには極端に血圧が低い人もいると思います。ではその人たちは血圧が
低いから大丈夫かというと、そうではありません。低血圧はめまいやふらつき、
幻覚の原因になるからです。食事をするのは大切なことですが、
食べたものを消化するには体液を使います。体液が少ないと血液中の水分も消化に
向かわなくてはいけません。そうすると血管内の水分量が減り、結果として低血圧に
なってしまうことがあります。それだけでなく、水分摂取が少ないと脱水で低血圧に
なってしまうことも考えられます。服薬管理がきちんとできていない場合も、
低血圧が起こることがあります。血圧が低いからといって安心していると、転倒等の
リスクが増えてしまうため低血圧についても気を付ける必要があります。

3.ヘルパーが調理のケアで活用できるアイディア

それではヘルパーが調理のケアで気を付けるべきなのはどのようなポイントでしょうか。
それは以下の点が考えられます。

・塩分を控えめにする。

醤油を付けるときは小さじ一杯(濃い口醤油だと塩分にして0.8g)別盛りにしたり、
味ぽんやおろしポン酢を利用したり、汁物は具を多く入れたりなどの工夫をすることで簡単に
減塩することができます。漬物が必要なら、塩でなく味ぽんや昆布茶で浅漬けを作る、
または酢の物に変更するなどするとあまり食生活を変更せず減塩ができるのでお勧めです。

・おかずに肉だけではなく魚も取り入れる

魚にはEPA・DHAといった血液をサラサラにする効果のある脂がたくさん含まれています。
逆に豚肉・牛肉の脂は血管の中に悪い脂をため込んでしまう傾向があります。
しかし、豚肉や牛肉は適量なら疲労回復効果がある、貧血防止に役立つなどの効果が期待できます。
体に悪いのでは、と全部やめてしまうのではなく“食事に出す回数を減らすこと”を
目標にすると良いと思います。魚のおかずは週に2~3回以上を目安にすると良いでしょう。

・野菜や海藻を積極的にとる

野菜や海藻はビタミン・ミネラルを豊富に含んでいますし、料理のかさましにも使えます。
野菜は低カロリーなものが多いので、もう一品ほしいときにもピッタリです。食欲は視覚にも
左右されるため、彩を添えるために使うのも効果的。積極的に取り入れると満足感が増しますよ。

・おやつにお饅頭、クッキー、菓子パン等はNG。果物をカットしておくなどで対策

一人のときは、食事を菓子パンやお饅頭で済ませてしまう利用者の方も多いと思います。
しかし、菓子パンやお菓子類は糖分・油分も多く、血圧のためにはあまりよくありません。
ケアのときに季節の果物やバナナなどを用意し、パックに入れておくなどして保存。
それをおやつ、軽食代わりに食べていただければ高血圧の予防にもなります。
果物はカリウムや食物繊維も豊富なので、ぜひ取り入れていただきたい食材です。

・できる範囲で体を動かしていただく

適度な運動も血行をよくしてくれます。できるところはご自身の力でやっていただくことが
体の運動にもなり健康につながります。お手伝いをしすぎることはできるだけ避けたほうが
良いでしょう。

・食事、服薬は規則正しく

食事をしたりしなかったりすると、血管への栄養量が急激に増えたり減ったりするため
血管にダメージを与えてしまうことになりす。規則的に三食食べることは血管への
影響だけでなく、生活にリズムを付けることができるので生活が整い、
健康的な生活を送ることができるようになります。また、服薬のタイミングは
食事とセットになっていることが多いため、服薬もしっかりできるようになります。
栄養の面だけでなく生活の質を上げるためにも三食きちんと食事をとれていることが大切です。

4.お勧め簡単レシピ

・ほうれん草のわさび和え

ほうれん草を茹でます。
めんつゆを小さじ一杯程度にわさびをお好みで。
ほうれん草に和えると醤油だけのときよりも満足感があります。

・きんぴら(味ぽんで味付け)

味ぽんを醤油代わりに使用することで減塩することができます。
マグネシウムやカリウムといった微量栄養素だけでなく食物繊維が多い野菜やこんにゃくを
たくさん食べることができるのでお勧めの料理です。
仕上げにすりゴマを振りかけると香りもよくなり、薄味でも満足できる味わいになります。

・鮭のホイル焼き(キノコたっぷり)

キノコや少量のバターでうまみを追加すれば、薄味でもおいしく召し上がれます。

5.血圧を正常に保って健康的な生活

高血圧を放っておくと、心筋梗塞や脳血管疾患の原因となってしまいます。
しかし、食生活を見直すことでリスクを軽減することが可能です。
急に生活を変えてしまうとストレスがかかり逆効果になってしまうので、少しずつコツコツと
食生活を変えて、維持していくことが大切です。普段の食生活をきちんと管理できることが
今後の健康の維持につながるでしょう。

<管理栄養士>

 

 

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