調理ケアで認知症予防のためにできること
認知症には様々な原因があります。そのため、これをすれば認知症を防げる!といったお手軽な
予防方法はありません。しかし、原因によっては対処することによってリスクを減らすことができます。
例えば、認知症の中でも脳の血管がつまることで発症する認知症は、血管の状態を良好に保つことで
予防することができます。また、体内を著しく酸化させてしまうと、アルツハイマー型認知症に
なりやすくなります。加えて、生活にストレスが多すぎるとドーパミンが減少してパーキンソン病や
レビー小体型認知症のリスクが上昇してしまいます。これらは認知症の原因の一端ですが、
食事や生活習慣によってリスクを減らすことができます。以下では原因に対しての対策を
みていきたいと思います。
1.認知症予防のための抑えるべきポイント3点
・血管を健康にしよう
血液は血管を通り体中に栄養を運んでいます。体を健康に保つにはその通り道である血管がきれいに
保たれていることが何よりも重要です。血管を健康に保つためには、食生活を健康的にしておく
必要があります。“健康的な食生活”とは「ご飯やパンなどの主食 肉や魚の主菜 小鉢などの副菜
汁物に加えて乳製品・果物をバランスよく食べることができる食生活」のことです。
食事を抜いたり、大食いをしてしまったり、テレビ鑑賞をしながらずっと食べてしまう
「ながら食い」は血管だけでなく胃腸にもダメージを与えてしまいます。
そのため一日三回バランスよく食事することが大切です。
そうはいっても三食毎回品数をそろえるのは大変だと思います。しかし、品数については、
「昨日の朝ごはんはパン一枚だったから、今日はサラダを多めに追加しよう」など大まかに
守られていれば大丈夫です。それに出来合いの惣菜なども活用し、できる範囲で品数を
増やしましょう。
・体内の酸化を予防しよう
体は代謝したり動いたりすることで酸素を使っています。その過程でできるのが活性酸素です。
この活性酸素は、ウィルスを撃退するなど適度なら有効な成分ですが、出すぎてしまうと体が
酸性になり、自分の細胞を痛めつけてしまいます。この活性酸素を減らすには、
リラックスして血行を整えることが必要です。
「睡眠をしっかりとる」
「適度に動いて体調を整える」
「バランスの良い食事をとる」
これらがポイントになっています。バランスの良い食事の中でも、特に酸化予防効果があると
いわれている食品があります。酸化予防効果がある成分は ビタミンC、E、カロテン、
ポリフェノールといったもので、これらが多く含まれている食品を食べることで酸化予防ができます。
これらの成分は野菜やゴマ、果物だとブドウの皮にたくさん含まれています。
野菜は、抗酸化作用がある成分だけでなく、ビタミン、ミネラルがたくさん含まれていて、
毎日の食事に積極的に取り入れたいところです。ブドウの皮は良質のポリフェノールが
多く含まれているため、特にお勧めしたい食品です。
しかし、ブドウの皮と言われると、戸惑うかもしれません。丸ごと食べるタイプのブドウや
100%のぶどうジュースならポリフェノールの成分がしっかりとれるためお勧めです。
・ドーパミンを増やそう
ドーパミンは、楽しいとき、やる気がわいているときに脳内に出てくるホルモンの一種です。
このホルモンが少ないと、認知症になりやすくなってしまいます。認知症の初期症状に、
「何事も面倒くさく感じる」という症状が出てくることがあると言われ、また、それは
ドーパミンの減少も原因ではないかと言われています。そのため、ドーパミンの量を
維持していくことは大切なことだと言えます。ドーパミンを維持するためには
「適度な運動」
「達成感」
「魚や大豆などの良質なたんぱく質」
が効果的です。高齢の利用者さんには、家に閉じこもってしまいがちな人も多くいると思います。
そのため、ヘルパーが来たときのコミュニケーションを楽しみにしているという方も
少なくありません。利用者さんと適度なコミュニケーションをとることは、それだけで
利用者さんへの良い刺激となり認知症予防効果も期待できます。ドーパミンは食事からも
増やすことができます。それが魚や大豆に含まれているタンパク質をとることです。
これらのタンパク質にはドーパミンの分泌を助ける作用があるので、積極的に調理に
取り入れることをお勧めします。
2.調理のケアで取り入れたい食材
以上の点から、調理に入るときには、魚や大豆を中心とした食事で、野菜が豊富に
含まれているメニューが認知症予防に適していると言えます。以下のようなメニューが参考例です。
例1)ご飯 あら汁 揚げ出し豆腐 かぼちゃのサラダ
例2)ご飯 けんちん汁 サンマの塩焼き(大根おろし多め) 人参しりしり
≪調理のワンポイント≫
*揚げ出し豆腐は片栗粉をまぶした後、少し多めの脂で焼き色を付ければ簡単です。
*かぼちゃのサラダに胡麻ドレッシングを利用すると、簡単にたくさんゴマをとることが
できますのでお勧めです。*利用者さんになじみ深いメニューだと、
会話も弾むと思います。栄養バランスはもちろん大事ですが、ご本人の嗜好を
知っておくことも同じくらい大切です。
3.認知症予防のために
ヘルパーは、家族や身近なひとたちとは違った視点で、利用者さんに接しています。
調理のケアで入ったときも、日々の状況を比較し、第三者的に観察している専門職です。
認知症の進行に気づきやすい役割も担っています。認知症の初期症状で、
「食事量が極端に減る、もしくは増える」「注意力が散漫になりやすい」
「今まで楽しんでいたことが面倒くさくなりがち」「感情的になることが増えてきた」
「物忘れが増えてきた」など、日々の変化の中で見過ごされそうな情報も、
伝達・共有することができます。認知症の原因は様々ですが、初期であれば、服薬や
水分強化など簡単な対処によって進行をゆっくりにできることもあります。認知症予防の
ためにも、日々の記録や観察をしっかり行い、現状把握・情報共有に務めることが大切です。
<管理栄養士>