契約書はビジネスにおいて極めて重要な役割を果たしています。しかし、偽造や改ざんがあると、社会的信用を失うなど、大きな損失が生じるかも知れません。さらに、SNSの発達によって、企業の不祥事が多くの方々に露見するリスクも高まっています。
そこで本記事では、契約書の偽造・改ざんについて網羅的に解説します。この記事を読めば、契約書に関する知識が深まり、自己防衛スキルが向上します。今回の記事はビジネスマンには必見の内容です。ぜひ、最後まで記事を読んでください。
目次
契約書の偽造・改ざんとは?
原本やコピーの内容書き換え
署名や捺印の偽造
契約書を偽造・改ざんした場合の罪
文書偽造罪の種類
私文書偽造罪
公文書偽造罪
有印と無印の効力の違い
契約書を偽造・改ざんされた場合は?
偽造・改ざんを見破る方法
契約書の偽造・改ざんを防ぐ方法
改ざん防止機能の用紙を使用する
割印・契印を押す
電子署名を活用する
印鑑の無断使用を事前に防ぐ
契約書の偽造・改ざん防止には「改ざん・偽造防止用紙」がおすすめ
契約書の偽造・改ざんとは?
契約書の偽造・改ざんは、法律上重大な問題です。契約書はビジネスにおいて重要な役割を果たすため、こうした問題があると社会的信用の失墜など、多大な損失が生じます。そのため、どのような行為が罪に問われるかを理解しなければいけません。
次項では、契約書の偽造・改ざんに問われる行為を解説していきます。
原本やコピーの内容書き換え
契約書の偽造・改ざんに問われる行為はいくつかあります。そのなかで、もっとも一般的なのは原本やコピーの書き換えです。これは、契約書の内容を意図的に変更し、自己都合の良い状況を作り出します。具体例として、従業員が知らないあいだに会社側で故意に契約期間や支払い条件を変更するケースがあげられます。
署名や捺印の偽造
署名や捺印は契約書を成立させるうえで、とても重要な位置づけです。そのため、これらを偽造するのは罪に問われる行為です。たとえば、第三者の名前を使って、金銭消費貸借契約を結んだ場合、当然犯罪となります。
電子契約書の書き換え
2021年の電子帳簿保存法の改正により、電子契約書はデータのまま保管できるようになりました。これにより、紙ではなく電子ベースで契約書を締結する企業も増えています。電子ベースの契約書は、紙の契約書と同様に法的に有効なものとみなされます。そのため、故意に書き換えなどをした場合は、偽造・改ざんの対象です。
契約書を偽造・改ざんした場合の罪
契約書を偽造・改ざんした場合は、どのような罪になるのでしょうか。基本的に契約書の偽造は「文書偽造罪」、契約書の改ざんは「文書変造罪」に該当し、重い処罰が課せられます。
文書偽造罪の種類
ビジネスで多く使われる契約書は、一般的に私文書と呼ばれます。私文書は、会社や個人が作成した書面であり、一例として契約書・領収書・履歴書などです。そして、文書偽造罪には、私文書偽造罪と公文書偽造罪があります。
ここでは、それぞれの違いを解説します。
私文書偽造罪
私文書偽造罪は、会社や個人が作成した文書を意図的に偽造する罪です。私文書偽造罪に該当する書類の具体例は、以下の表を参照ください。
偽造内容 | 使用用途 | |
領収書 | 日付・店名の変更 | 会社の経費を利用するため |
履歴書 | 学歴を詐称 | 採用面接に合格するため |
給与明細書 | 給与明細の金額を変更 | 給料を少なく支払うため |
私文書偽造の目的は、主に自身の目的を達成するために用いられるケースが多いです。具体例としては、偽造した履歴書を提出して採用面接に合格するなどがあげられます。
また、会社側が社員の給与明細書を偽装していた場合も、私文書偽造罪が成立する可能性があります。
公文書偽造罪
公文書偽造罪は、官公庁やその他公的機関が発行する文書を意図的に偽造する罪です。公文書偽造罪にあたる書類は、以下の表を参照ください。
偽造内容 | 使用用途 | |
住民票 | 住民票自体を偽造 | 契約時に住民票が必要な場合 |
免許証 | 免許証自体・顔写真など | 契約時の身分証明書の提示 |
印鑑証明書 | 印鑑証明書自体 | 契約時に印鑑証明書が必要な場合 |
公文書は、社会的信用のある文書と認識されています。そのため、公文書偽造罪によって、社会的信頼性を損なう点から、私文書偽造罪よりも重い罪として扱われます。
有印と無印の効力の違い
私文書・公文書には、有印と無印があります。有印とは、署名や捺印がある文書を指します。無印は、署名や捺印がない文書です。署名や捺印は、文書の真正性や正当性を保証する効力があります。このため、有印文書を偽造・改ざんすると、より重たい罰則が適用されます。
契約書を偽造・改ざんした場合の罰則
契約書を偽造や書き換えた場合、どのような罰則が考えられるのでしょうか。
ここでは、有印・無印、それぞれの罰則を表にまとめて解説します。
刑法 | 処罰 | |
有印私文書偽造罪 | 刑法159条1項 | 3ヶ月以上5年以下の懲役 |
有印私文書変造罪 | 刑法159条2項 | 3ヶ月以上5年以下の懲役 |
無印私文書偽造罪 | 刑法159条3項 | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
無印私文書変造罪 | 刑法159条3項 | 1年以下の懲役または10万円以下の罰金 |
上記の表でわかるとおり、有印文書の偽造や改ざんは無印に比べて罪が重たく、罰金刑がありません。したがって、有罪が確定次第、懲役刑になる可能性が高くなります。
契約書を偽造・改ざんされた場合は?
契約書を偽造・改ざんされたときは、犯罪の証拠集めが重要です。なぜなら、確固たる証拠がなければ罪を立証できないからです。しかし、決定的な証拠を見つけるのはとても難しいため、疑念がある場合は早めに警察や弁護士に相談しましょう。
偽造・改ざんを見破る方法
契約書の偽造・改ざんを見破るには、専門家による印鑑鑑定や筆跡鑑定が効果的です。専門家による鑑定の結果、第三者による行為が発覚した場合、偽造・改ざんの可能性を疑いましょう。
契約書の偽造・改ざんを防ぐ方法
偽造や改ざんは、証拠集めが困難で立証が難しい犯罪です。なぜなら、インターネットの普及によって、偽造・改ざんの精度も進化しているからです。そのため、事前の予防策が重要です。次項から、具体的な方法を4つ紹介していきます。
改ざん防止機能の用紙を使用する
偽造・改ざんを防ぐには、偽造防止用紙の使用が有効です。この用紙は、複写時にコピーの文字が表示される特殊加工で作られています。車検証や住民票をコピーすると、コピーの文字が表示されるので馴染みのある方も多いでしょう。
なお、通販サイトで購入できる用紙は汎用性が高いため、第三者に使用されるリスクがあります。そのため、オリジナルの偽造防止用紙の方がセキュリティ面は向上するのでおすすめです。
割印・契印を押す
続いての予防策として、割印・契印があげられます。割印は、同じ内容の文書を2枚ずらして配置し、印鑑が文書にまたがるように押印する方法です。また、契約書が複数の場合は、契印といった方法もあります。
契印は、契約書の綴じ目や裏表紙に押印する方法です。契印によって、契約書を後から差し替えることができなくなります。
電子署名を活用する
契約書の偽造・改ざんを防ぐ方法として、電子署名の活用がおすすめです。電子署名は、実際の印鑑と同じ意味合いを持ちます。また、印鑑の紛失や盗難などのリスクもないため、安心して利用できるのも魅力です。
印鑑の無断使用を事前に防ぐ
契約書の偽造・改ざん防止策として、印鑑を無断使用させない運用があげられます。具体的には、鍵付きのロッカーを設置する・管理者の承認後に印鑑を持ち出すなど、対策はさまざまです。このように、印鑑の無断使用を事前防止することで、文書の偽造・改ざんのリスクが低減できるでしょう。
契約書の偽造・改ざん防止には「改ざん・偽造防止用紙」がおすすめ
本記事では、契約書の偽造・改ざんについて、網羅的に解説しました。契約書の偽造・改ざんは、社会的信頼性を損ない、重罪として扱われます。そのため、改ざん・偽造防止用紙や電子署名の活用などを事前に講じることが重要です。
とくに、改ざん・偽造防止用紙は、印刷時にコピーの文字が出る仕様のため、ほかの予防策よりセキュリティ面が高いツールとなっています。インターネットの普及により、偽造・改ざんといった犯罪の完成度も年々進化しています。
以上のことから、契約書のセキュリティ面を強化したい企業担当の方は「改ざん・偽造防止用紙」の導入を検討してみましょう。