
介護の現場では、サービス実施記録が日々欠かせません。この記録は、職員間の情報共有、サービスの質の担保、利用者様の状況把握、そして監査対応など、あらゆる場面で重要な役割を果たしています。
しかし、現場が多忙になると「うっかり書き忘れた」「内容に漏れがあった」「記録時間がズレていた」といったミスが発生しがちです。こうした記録ミスは、トラブルや信用問題にも発展しかねません。
そこで今回は、記録ミスを減らし、誰が見ても正確で分かりやすい「質の高いサービス実施記録」を作るためのチェックポイント5選をご紹介します。日々の記録作成に取り入れて、ミスゼロの現場を目指しましょう!
チェックポイント①:記録は「5W1H」で整理する
記録を書く際には、「5W1H(When・Where・Who・What・Why・How)」の視点が非常に効果的です。
たとえば、次のような記録があるとします。
> 「昼食介助を行い、完食された。」
この文章だけでは、以下のような疑問が残ります。
誰が?(職員名)
どこで?(居室 or 食堂)
何時頃?(時間帯)
どのように?(声かけの工夫や身体的支援の程度)
より具体的な記録例にすると、こうなります。
> 「11:45 食堂にて、田中職員が○○様に昼食の声かけとスプーン介助を実施。口腔内の動き良好で、完食された。」
このように「誰が・いつ・どこで・何を・なぜ・どうしたか」を意識するだけで、ぐっと情報の質が高まります。後から見た他職員にも状況が伝わりやすく、ミス防止につながります。
チェックポイント②:記録の「主語」と「時系列」を明確に
記録でありがちなミスの一つが、「主語の曖昧さ」です。
例えば、「転倒されたので介助した」とだけ記載されていると、誰が転倒したのか、誰が介助したのか分かりません。
正しい記録は以下のようになります。
> 「15:10 居室内で○○様が立ち上がりの際に転倒。○○職員がその場に居合わせ、すぐに介助を行い、右膝を確認するも外傷なし。」
このように、「誰が何をしたのか(主語+動詞)」を意識することで、記録が明確になり、誤解やミスを防げます。
さらに、記録を時系列で整理することで、利用者様の1日の流れや異変にも気付きやすくなります。たとえば、
10:00 排泄介助
10:30 水分補給
11:00 散歩誘導中にふらつき確認
といったように、時間順に沿って記載すると、利用者様の状態の変化や原因の特定にも役立ちます。
チェックポイント③:主観的表現ではなく「事実」を記録する
「○○様は機嫌が悪そうだった」
「元気がなかったように感じた」
このような記録は、主観に基づくあいまいな表現となり、客観性に欠けてしまいます。仮に監査や事故報告などで記録を求められた際には、曖昧な表現は信頼性に乏しくなります。
正しくは以下のように、「観察した事実」を記録することが大切です。
> 「朝の挨拶に対して返答なし。終始、無表情で食事の際も目を伏せておられた。声かけには『放っておいて』と発言。」
このように客観的な事実に基づいた記述にすることで、誰が見ても同じ解釈ができる記録になります。「感じたこと」ではなく「見たこと・聞いたこと・行ったこと」を中心に記載しましょう。
チェックポイント④:略語や専門用語の使用に注意
現場では略語や専門用語を使いがちですが、記録は「第三者が見ても理解できる内容」である必要があります。
たとえば、「ADL良好」「TPOに配慮」といった表現は、一般の方や異動してきたばかりの職員には伝わりにくい可能性があります。
略語ではなく、次のような表現を心がけましょう。
✖「ADL良好」→ 〇「起床・更衣・排泄・食事などの生活動作を自力で行えている」
✖「OTと連携済み」→ 〇「作業療法士と歩行訓練計画について相談・連携を実施」
特に、行政監査や家族との情報共有の場面では、記録の読み手が専門職ではないケースも想定されます。読み手を意識した記録を心がけましょう。
チェックポイント⑤:必ず「見直し」を習慣に
最後のポイントは、「記録の見直し」です。どんなに経験豊富な職員でも、記録ミスや漏れは起こり得ます。
見直しの際は、以下の観点をチェックしましょう。
□ 時間や日付に誤りはないか?
□ 主語と動作が明確か?
□ 漏れやダブりがないか?
□ 読みにくい表現・専門用語がないか?
□ 感情表現・主観が入っていないか?
可能であれば、ダブルチェック体制(自分ともう一人の職員で確認)を導入することも効果的です。記録を読み返すことで、情報共有の質も高まり、チームの連携力も強化されます。
まとめ:記録は「安心と信頼」を生む大切な業務
サービス実施記録は、単なる業務の一環ではありません。利用者様の命や尊厳を守り、職員間の連携を支え、施設全体の信用にも関わる極めて重要な「証拠資料」です。
今回ご紹介した5つのチェックポイントは、どれも基本的でありながら、ミスを防ぐ強力な武器になります。
✅ チェックポイントおさらい
1. 5W1Hを意識した構成
2. 主語と時系列の明確化
3. 客観的な事実の記述
4. 略語・専門用語の排除
5. 見直し習慣の定着
記録の質が向上すれば、自然と現場のコミュニケーションも良くなり、利用者様へのサービスの質も向上します。
ぜひ、日々の記録にこの5つのチェックポイントを取り入れてみてください。ミスを減らし、正確で信頼される記録が書けるようになれば、あなたの現場はさらに強く、優しくなるはずです。
