工事請負契約書|詳しい書き方とポイント、注意点を解説

「工事請負契約書とはどんな書類?」
「工事請負契約書を取り交わさなければいけないけれど、どのように書けばいい?」

この記事を読んでいる方は、そのような疑問を持っていることでしょう。

「工事請負契約書」とは、工事の際に取り交わす契約書です。
発注者が何らかの工事を業者に依頼した際に、工事の内容や工期、請負代金などを細かく取り決めて書面を交わします。
この契約書は、工事の規模や種類に関わらず、すべての工事に対して作成・締結しなければいけないと建設業法で定められています

以下はその見本です。

 

 

工事請負契約書を結ぶのは、以下のような理由からです。
・一方に不利な契約を結ばないため
・工事内容を明確化して認識を共有するため
・トラブルや紛争を未然に防ぐため

作成の際には、以下のポイントを押さえておくとよりよい内容ができるでしょう。

<工事請負契約書を作成する時のポイント>

・工事遅延の違約金を明記する
・不可抗力によって工期を延長する場合について条件などを明記する
・追加工事代金が発生する場合について条件などを明記する
・近隣からのクレーム対応について明記する
・地中障害物を発見した場合どうするかを明記する

この記事では、工事請負契約書について知っておきたいことをひと通りまとめました。

▼本記事の内容
◎工事請負契約書とは?
◎工事請負契約書に関する法律
◎工事請負契約書が必要な3つの理由
◎工事請負契約書の作成から締結までの流れ4ステップ
◎工事請負契約書に記載する必要事項14項目(=法定記載事項)

◎工事請負契約書を作成する際の5つのポイント
◎工事請負契約書を締結する際の、建設業法に則った5つの注意点
◎工事請負契約書にかかる印紙税額

最後まで読めば、知りたいことがわかるはずです。 この記事で、あなたが工事請負契約書をスムーズに締結できるよう願っています。

1. 工事請負契約書とは

そもそも「工事請負契約書」とはどんなものでしょうか?
まずはそこから、わかりやすく説明しましょう。

1-1. 「工事請負契約書」とはどんな書類?

「工事請負契約書」は、ひと口でいえば、工事の際に取り交わす契約書です。

「発注者」が何らかの工事を業者=「受注者」に依頼した際に、工事の内容や工期、請負代金などを細かく取り決めて書面を交わします。

「請負契約」というのは、契約書通りの業務内容を「完成させること」を約束するものです。
つまり、工事請負契約書は、請け負った業者=受注者が工事を取り決め通りに完成したときにはじめて発注者が代金を支払うという約束の証といえます。

このような重要な書面であるため、工事請負契約書に記載する内容は、建設業法で定められています。 さらに、契約書に設計図面・見積書・工事請負契約約款も添付して、工事の詳細を取り決めることもあります。
この契約書があることで、発注者と受注者の間で「言った・言わない」のトラブルを避け、共通の認識で工事を進めることができます。

【工事請負契約書の見本】

1-2. 工事請負契約書はすべての工事に必要

工事請負契約書は、工事の規模や内容に関わらず、すべての工事で双方の合意のもとに取り交わすことが法律で義務付けられています
住宅の新築工事はもちろん、一部のリフォーム工事などの小さな工事でも契約書が必要です。
また、建設業許可のない受注者でも、工事請負契約書は作成しなければなりません

このような法律ができたのには理由がありますので、説明しておきましょう。

一般的に日本の法律では、契約書のない口約束でも契約は成立します。
「売ります」「買います」の言葉だけで、売買契約は成立したと見なされるのです。
ですから建築工事でも、「工事をお願いします」「請け負います」と口頭で約束すれば、「契約」自体は成立してしまいます。

ただ、建築工事の場合、「契約が口頭で成立したので、契約書は必要ない」ということにはなりません。
かならず契約書が必要なのです。

その理由は以下です。

・建設工事は、発注者と受注者との間で知識の差が大きい
→もし受注者=建設業者がこっそり手抜きなど悪いことを行っても、発注者は気づかない可能性がある そのようなことが起きないよう、契約内容を書面でくわしく残しておく必要がある

・建設工事は、代金が高額である
→何かの事情で工期延長などのトラブルがあれば、追加費用や補償など多額の費用が発生する そんな場合にはどちらがどう負担するのかなど、あらかじめ決めておくべき

もし工事請負契約書を交わさずに工事をしても、口約束があれば「契約」は成立しています。
が、契約書を義務付けた建設業法には違反しているため、行政処分を受ける恐れがありますので、かならず作成しましょう。

1-3. 工事請負契約書に関する法律

では、法律では工事請負契約書についてどう定められているのでしょうか?

これに関する法律は「建設業法」で、わかりやすくいえば以下のような内容です。

・第18条:建設工事の請負契約を結ぶ発注者と受注者は、対等の立場で公正な契約を結び、誠実にその内容を実行しなければならない
・第19条:建設工事を請け負った受注者は、以下の事項を契約書の書面にして、発注者とお互いに署名押印の上で取り交わさなければならない

<記載事項>工事内容、請負代金の額、工事着手の時期及び工事完成の時期(以下略)

※契約書の記載事項は、「4. 工事請負契約書に記載する必要事項14項目(=法定記載事項)」でくわしく説明しますので、そちらを参照してください。

ただ、場合によっては書面でなく電子データによる契約書でも認められます。
建設業法の実際の条文は以下の通りですので、必要があれば読んでみてください。

【建設業法】
(建設工事の請負契約の原則)
第十八条 建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。

(建設工事の請負契約の内容)
第十九条 建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
一 工事内容
二 請負代金の額
三 工事着手の時期及び工事完成の時期
四 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
五 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
六 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
七 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
八 価格等(物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第二条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
九 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
十 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
十一 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
十二 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
十三 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
十四 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
十五 契約に関する紛争の解決方法
十六 その他国土交通省令で定める事項

出典:建設業法(昭和二十四年法律第百号)

2. 工事請負契約書が必要な3つの理由

前述したように、工事請負契約書の作成は法律で義務付けられています。
とはいえ、業者の中には契約書なしで工事を行うものもあり、もちろんそのような業者には工事を依頼すべきではありません。

では、なぜ工事請負契約書をかならず取り交わさなければいけないのでしょうか?
それは、以下の理由からです。

・一方に不利な契約を結ばないため
・工事内容を明確化して認識を共有するため
・トラブルや紛争を未然に防ぐため

2-1. 一方に不利な契約を結ばないため

前述のように、建設工事は多額の費用が発生するため、トラブルにつながりやすいものです。
そんなトラブルの中で、一方が不利な契約を結ばされるというケースも多くあります。
たとえば、以下のようなものです。

・発注者から一方的に工事内容の変更を指示され、受注者がそれを承諾しないと工事が完了しない
・発注者側から代金が受注者にいつ振り込まれるのか、あらかじめ明示されない
・発注者側が、資材をどこで購入するか、いくらで購入するかなどを受注者側に指定する
・自然災害など不可抗力によって生じた損害の負担を、受注側だけが負担させられる    など

建設業法第十八条では、「各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結」することと定められています。 この「対等な立場」を守るために、契約書が必要なのです。

2-2. 工事内容を明確化して認識を共有するため

また、発注者と受注者の認識をすり合わせて合意しておくためでもあります。

たとえば、工事についてお互いに納得したことでも、実際にできあがったものを見てから「こういうつもりじゃなかった」「別の意味で言ったつもりだった」など、それぞれの認識違いからトラブルになることもあり得ます。
それを未然に防ぐため、細かい工事内容を取り決めておくわけです。

また、万が一損害賠償などの訴訟問題に発展した際には、細かい取り決めが証拠資料になります。
工事請負契約書があれば、お互いの合意内容を客観的に第三者に判断してもらうことができるでしょう。

2-3. トラブルや紛争を未然に防ぐため

工事請負契約書には、「もしトラブルが発生したらどうするか」についても細かく取り決めます。 たとえば、以下のようなことです。

・発注者、受注者のどちらかから、設計変更、工事の延期や中止の申し出があった場合、工期の変更や代金の変更、損害の負担はどうするか
・自然災害などの不可抗力で、工期の変更や損害の負担が生じた場合はどうするか
・工事によって第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担はどうするか     など

このように、トラブルになりそうなことを事前に細かく取り決めておくことで、大きな紛争に発展せずに解決できる可能性が高まります。

3. 工事請負契約書締結までの流れ4ステップ

工事請負契約書の重要性がわかったかと思います。
ではここからは、実際に工事請負契約書を締結するまでの流れを説明していきましょう。

工事依頼から契約書締結までの大まかな流れは、以下の4ステップです。

1)発注者から受注者に見積もりを依頼する
2)受注者から発注者に見積もりを提示する
3)発注者が納得いかなければ双方で調整する
4)双方合意できたら工事請負契約書を締結する

3-1. 発注者から受注者に見積もりを依頼する

発注者は、工事を依頼したい請負業者に対して、「このような工事を依頼したいのだが、見積もりをお願いします」と依頼します。
その際に、工事のくわしい内容を伝えます。

3-2. 受注者から発注者に見積もりを提示する

受注者=請負業者は、発注者の依頼をもとに見積書を作成します。
建物の建築や大掛かりなリフォームなどの場合は、発注者との打ち合わせをもとに、図面や仕様書なども作っていきます。

3-3. 発注者が納得いかなければ双方で調整する

見積もりを受け取った発注者は、内容をよく確認します。
工事の内容、代金などすべてに納得できればいいですが、もし納得できない部分があれば、受注者と相談、調整します。

3-4. 双方合意できたら工事請負契約書を締結する

調整の上で、双方が合意できたら、ここで初めて工事請負契約書を締結します。
前述したように、この契約書は双方の合意のもとに結ぶものと法律で決められています。
たとえば住宅建設で、まだ工事内容について発注者が最終的な決定をしていないのに、請負業者側が契約書だけ先に用意して署名押印させようとするのは建設業法に反しています。

くれぐれも、あいまいな部分があるうちは契約書を締結しないようにしてください。

4. 工事請負契約書に記載する必要事項14項目(=法定記載事項)

工事請負契約書の契約までの大きな流れはわかりました。
では、もっと具体的に、工事請負契約書に何を書けばいいのかを見ていきましょう。
前述したように、建設業法で決められている記載事項は主に14項目です。

 ①工事内容 
 ②請負代金の額
 ③工事着手の時期/工事完成の時期
 ④請負代金支払時期・方法
 ⑤工事の延期・中止の申し出があった場合の工期の変更、請負金額の変更、損害の負担とそれらの算定方法  
 ⑥不可抗力による工期の変更、損害の負担とその算定方法
 ⑦価格の変動・変更に基づく請負金額/工事内容の変更
 ⑧工事により第三者が損害を受けた場合の賠償金負担
 ⑨注文者が工事に使用する資材や建設機械などを提供する場合、その内容と方法
 ⑩注文者による検査の時期・方法/引渡しの時期
 ⑪完成後の請負代金の支払の時期・方法
 ⑫契約不適合責任とそれに対する保証保険契約を締結する場合はその内容
 ⑬履行の遅滞、債務不履行があった場合の遅延利息、違約金その他の損害金
 ⑭契約に関する紛争の解決方法

では、まず工事請負契約書の見本をみてみましょう。

<表>

<裏>

この見本の①〜⑭の項目が、記載を義務付けられているものです。 では、それぞれ順番に説明していきましょう。

4-1. ①工事内容

どのような工事をするか、その内容をくわしく記載します。
具体的には「工事名(◯◯建設工事など)」「工事内容」「工事場所の住所」などです。
図面や仕様書を添付する場合は、どれを参照するのか図面番号を記します。

4-2. ②請負代金の額

工事の請負代金の額を記入します。
契約前に見積もりを出し、発注者・受注者双方が合意した金額を記載してください。
見積もりの内容に関しては、6-4. 見積りには工事内容・日数の内訳を明示する」も参考にしましょう。

4-3. ③工事着手の時期/工事完成の時期

工期に関しては、工事着手の時期と工事完成の時期を明記します。
あまりに短い工期を設定することは建設業法で禁じられていますので、同種の工事と比較して常識的な日数を出しましょう。

「6-3. 不当に短期の工期を設定しない」も参照してください。

4-4. ④請負代金支払時期・方法

「請負代金の全部」「一部の前金払」「工事が完了した部分」など、何回かに分けて支払う場合は、それぞれの支払い時期と支払い方法を明記します。

4-5. ⑤工事の延期・中止の申し出があった場合の工期の変更、請負金額の変更、損害の負担とそれらの算定方法

発注者、または受注者どちらかが、工事の延期や中止を申し出た場合についての取り決めです。

・工期が遅れた場合の変更について、どのような条件で変更を認めるか
・それによって工事代金が変わる場合は、お互い相談の上で変更できること
・もし損害が生じたら、どのようにそれを算出するか

などを決めておきます。
工事の延期はトラブルになりやすいので、あらかじめいろいろな場合を想定して決めておきましょう。
遅延の違約金については、「5-1. 工事遅延の違約金を明記する」でくわしく説明していますので、そちらも参考にしてください。

4-6. ⑥不可抗力による工期の変更、損害の負担とその算定方法

また、天候不順や自然災害など、不可抗力によって工期が延びる場合などは、前項と同じには扱えませんので、別途取り決めておきます。
遅延の損害金を受注者=請負業者に負わせるのは酷でしょうから、その責任がないことを明示しておくとよいでしょう。

くわしくは「5-2. 不可抗力によって工期を延長する場合について条件などを明記する」をみてください。

4-7. ⑦価格の変動・変更に基づく請負金額/工事内容の変更

契約前から工事完了までの間に物価が変動すると、建築資材などが高騰して、請負業者が当初想定していた予算額より建築費が高くなるケースがあります。
そうなった場合、もし受注者が「工事費用の追加は認めない、建材を変更するのもいやだ」と言えば、請負業者は損をしてしまいます。

そのような場合に備えて、受注者と相談の上で請負金額を変更したり、工事内容を変更して対応したりすることを明記しておきます。

4-8. ⑧工事により第三者が損害を受けた場合の賠償金負担

工事中に、その工事が原因で近隣住民など第三者がケガをしたり、第三者の持ち物を傷つけたりした場合の損害賠償に関しても取り決めます。
その件に関しての対応や解決は、発注者か受注者かどちらが責任を持つのか、損害賠償の負担割合はどうするのか、などです。

4-9. ⑨注文者が工事に使用する資材や建設機械などを提供する場合、その内容と方法

工事に必要な建築資材や機会は、一般的には受注者=請負業者が調達します。
が、注文者が自分で調達したものを使って欲しいと提供する場合は、「どのように扱うか」なども決めておく必要があります。

4-10. ⑩注文者による検査の時期・方法/引渡しの時期

工事が完了した際には、注文者が検査をして、契約通り問題ないと認められれば正式に完成となります。
その検査はいつ、どのように行うか、そして問題がなかった場合の物件の引き渡しはいつにするかを決めます。

また、工事の途中に、一部完成した部分を検査する場合は、その時期も決めておきます。

4-11. ⑪完成後の請負代金の支払の時期・方法

工事完成後、請負代金をどのタイミングで支払うかと、その支払い方法を記載します。

4-12. ⑫契約不適合責任とそれに対する保証保険契約を締結する場合はその内容

「契約不適合責任」とは、引き渡されたものに契約内容と異なる点あった場合、受注者側が負う責任です。
「完成です」と引き渡した建物が、契約書と違う仕上がりになっていた場合、請負業者に責任をとって工事をし直したり、金銭で補償したりするケースがあります。
ただ、細かい不満まですべて対応していてはキリがありません。
そこで、受注者が責任を持つ範囲はどこまでか、どの程度の責任をとるのか、を明記しておきます。

また、契約不適合責任に対しては、「瑕疵担保責任保険」という保険もあります。
(「契約不適合責任」が、以前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていたため、保険はこの名称のままのものがあります。)
これに加入しておけば、もし瑕疵があった場合は保険会社が補償してくれるわけです。
そのため、加入する場合はどのような保険契約を結ぶのかも記載しておきましょう。

4-13. ⑬履行の遅滞、債務不履行があった場合の遅延利息、違約金その他の損害金

契約に盛り込まれている内容に関して遅れがあった場合、または支払いの遅れがあった場合についても取り決めます。
遅れた分の「遅延利息」や違約金など、どのような損害金を認めるか、どのような基準で算出するかなどについて合意しておきましょう。

4-14. ⑭契約に関する紛争の解決方法

もしこの契約に関して、取り決め以外のトラブルが発生した場合にはどうするか、解決方法も決めておきます。

以上の14項目は、工事請負契約書にかならず盛り込むべき事柄です。
が、見本を見てもわかるように、細かい内容すべては契約書に書ききれない場合もあります。
その際には、さらに細かい取り決めを記載した「工事請負契約約款」という「約款」を添付します。

これは、場合によっては何十ページにもわたる詳細な取り決めですので、ここには掲載しませんが、国土交通省が標準的な建設工事請負契約約款の見本を公開していますので、気になる方は以下のリンク先から確認してみてください。

▶︎国土交通省「建設工事標準請負契約約款について

 

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5. 工事請負契約書を作成する際の5つのポイント

ここまでで、工事請負契約書を作成することはできるかと思います。
ただ、トラブルを未然に防ぐよりよい工事請負契約書を作成するには、特におさえておきたいポイントがあります。
それを以下に挙げておきましょう。

・工事遅延の違約金を明記する
・不可抗力によって工期を延長する場合について条件などを明記する
・追加工事代金が発生する場合について条件などを明記する
・近隣からのクレーム対応について明記する
・地中障害物を発見した場合どうするかを明記する

5-1. 工事遅延の違約金を明記する

まず、工事が遅延した場合、受注者=建設業者は発注者に違約金を支払わなければならなくなります
その金額などで揉めることのないよう、違約金についてくわしく取り決めて契約書に明示しましょう。

違約金の金額に規定はありませんが、あまり高額だとその契約事項自体が無効と判断される可能性もあります。
そのため、「1日◯円」として合計額が請負代金全体の10%以内に収まるように決めるといいでしょう。

5-2. 不可抗力によって工期を延長する場合について条件などを明記する

発注者、受注者どちらの責任でもない不可抗力、たとえば地震などの自然災害によって工期が延びてしまうこともあります。
その場合、前項の遅延の規定にしたがって受注者が違約金を支払うのは、受注者にとって不公平でしょう。

そこで、「不可抗力の場合は受注者は違約金の支払い義務を負わない」という条件を付け加えておきましょう
ただ、それだけでは発注者が困ってしまいますので、「不可抗力で工事ができない場合は、受注者はただちに発注者に報告する」といったような一文も盛り込みましょう
速やかに報告があれば、双方で相談して今後の予定を立て直すことができます。

5-3. 追加工事代金が発生する場合について条件などを明記する

建設工事でトラブルになりがちなことのひとつが、追加工事です。
工事を発注したあと、または工事が始まってから、発注者が「やっぱりこうしてほしい」と追加の要望を出すといったケースはよくありますので、こういった追加工事についても細かく取り決めておきましょう。

具体的には、「追加工事が発生した場合は、受注者から発注者に費用を請求できる」という旨の内容を記載しておくといいでしょう。

5-4. 近隣からのクレーム対応について明記する

工事では、近隣からクレームが入ることもしばしばです。 それに対しての役割分担も、工事請負契約の時点で取り決めておきましょう。

・工事を始める前に、近隣住民への説明はどうするのか
・クレームがあれば、どちらがどう対応するのか

などです。
特に注意したいのは、クレームによる工期の延長についてです。
クレームが入ったことで、解決するまで工事ができなくなるなど、工期が延びてしまう可能性はあるでしょう。
その場合、「民間建設工事標準請負約款」では、以下のように定めています。

・クレームが生じた際には、受注者が解決しなければならない
・それによる工期の延長は認められない

この条件に納得できなければ、「近隣からのクレームがあれば、工期の延長ができる」という条件を記載した工事請負契約書を作成する必要があるでしょう。

5-5. 地中障害物を発見した場合どうするかを明記する

5つめのポイントは、「地中障害物」を発見した場合の対応です。

「地中障害物」とは、地面の下に埋まっているさまざまな障害物です。
・以前にあった建物の基礎、建材、ゴミなど
・巨大な石など
・浄化槽、排水管など

工事でこれらが発見されると、撤去のために工事を中断しなければならず、ときには撤去費用も発生します。
そこで、この費用や対応についても取り決めておくといいでしょう。
撤去費用は、受注者から発注者に請求できるのか、あるいは「まず受注者から発注者に報告し、撤去費用を見積もって、発注者の承諾があれば請求できる、なければ請求できない」とするのか、お互いに合意しておきましょう。

6. 工事請負契約書を締結する際の、建設業法に則った5つの注意点

また、工事請負契約書を締結する際に、建設業法の他の条項に則って注意しなければいけないこともありますので、これらについても説明します。

・現場代理人を選任する場合、注文者に通知が必要
・請負代金は原価割れしてはいけない
・不当に短期の工期を設定しない
・見積りには工事内容
・日数の内訳を明示する

・注文者の承諾なく「一括下請負」にしない

6-1. 現場代理人を選任する場合、注文者に通知が必要

建設工事の現場では、「現場代理人」を決めて常駐させるのが一般的です。
現場代理人は、受注者である建設請負業者のかわりに工事現場の責任者となって、工事全体を管理します。

もし現場代理人をおく場合は、受注者は発注者に対して、以下のことを書面で知らせる義務があります。

・現場代理人の権限の範囲
・現場代理人の行為について、発注者が受注者に異議や苦情を申し出る方法

これは、現場代理人が契約に反することを行ったりした場合に、発注者が正当な苦情を申し立てられるようにするためですので、受注者は忘れずにかならず通知してください。

そして、現場代理人に関する取り決めも、工事請負契約書に記載しておくといいでしょう。

【建設業法】

(現場代理人の選任等に関する通知)

第十九条の二 請負人は、請負契約の履行に関し工事現場に現場代理人を置く場合においては、当該現場代理人の権限に関する事項及び当該現場代理人の行為についての注文者の請負人に対する意見の申出の方法(第三項において「現場代理人に関する事項」という。)を、書面により注文者に通知しなければならない。

6-2. 請負代金は原価割れしてはいけない

建設工事は非常に高額な請負代金が発生するものです。
そのため、代金を支払う側である発注者と、請け負う受注者が上下関係のようになってしまうこともままあります。
となると、発注者はその立場を利用して、不当に安い代金を受注者に押し付けるというケースも発生します。

そこで建設業法では、このようなことがないよう、請負代金が原価割れする契約を結ぶことを禁じています

特に大手企業からの受注の場合、請負業者は「今後の継続的な契約が期待できる」などの理由から、不当に低い請負代金でも受け入れたくなってしまうかもしれませんが、原価以下の発注は法律で禁じられていることを知っておいてください。

【建設業法】

(不当に低い請負代金の禁止)

第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。

6-3. 不当に短期の工期を設定しない

また、前項と同様の理由で、短すぎる工期を設定することも禁止されています。
建設業法では、「通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間」を禁じると定められていますので、工期は同じような建設工事の例を参考に、常識の範囲で設定しましょう。

【建設業法】

(著しく短い工期の禁止)

第十九条の五 注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。

6-4. 見積りには工事内容・日数の内訳を明示する

また、契約のための見積もりにも法的な規定があります。
請負業者は、受注者に対して見積もりを出す際に、以下のことをはっきり示さなければなりません。

・工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳 ・工事の工程ごとの作業と、その準備に必要な日数

また、請負業者は発注者から見積もりを求められたら、請負契約が成立する前に見積書を出さなければなりません
契約書を結んだ後になって見積書を提出することは建設法に反していますので、かならず事前に発注者に渡し、内容に合意してもらってから契約しましょう。

【建設業法】

(建設工事の見積り等)

第二十条 建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際して、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費その他の経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を明らかにして、建設工事の見積りを行うよう努めなければならない。
2 建設業者は、建設工事の注文者から請求があつたときは、請負契約が成立するまでの間に、建設工事の見積書を交付しなければならない。

6-5. 注文者の承諾なく「一括下請負」にしない

さらに、請負業者は自分が発注者から請け負った工事を、下請け業者に丸投げする「一括下請負」に出すことも禁じられています
逆に、一括下請負を受けることも禁止です。
契約を結んだら、あくまで契約の当事者である請負業者が工事を担当する義務があるのです。

ただ、発注者が下請けに出すことを書面で承諾している場合は、例外として一括下請負も認められます
もしそのような方法をとる場合は、下請けの契約についても工事請負契約書に記載しておきましょう。

【建設業法】

(一括下請負の禁止)

第二十二条 建設業者は、その請け負つた建設工事を、いかなる方法をもつてするかを問わず、一括して他人に請け負わせてはならない。
2 建設業を営む者は、建設業者から当該建設業者の請け負つた建設工事を一括して請け負つてはならない。
3 前二項の建設工事が多数の者が利用する施設又は工作物に関する重要な建設工事で政令で定めるもの以外の建設工事である場合において、当該建設工事の元請負人があらかじめ発注者の書面による承諾を得たときは、これらの規定は、適用しない。
4 発注者は、前項の規定による書面による承諾に代えて、政令で定めるところにより、同項の元請負人の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて国土交通省令で定めるものにより、同項の承諾をする旨の通知をすることができる。この場合において、当該発注者は、当該書面による承諾をしたものとみなす。

7. 工事請負契約書にかかる印紙税額

さて、もうひとつ工事請負契約書に関して重要なことがあります。 それは「印紙」です。

工事請負契約書には、かならず契約金額に応じた印紙を貼付する必要があります。
もし印紙を貼らなければ、本来の印紙税額の3倍の過怠税が課せられますので注意してください。
また、印紙は貼ってあっても「消印」を押していなければ、印紙税額と同額の過怠税が発生しますので忘れずに消印しましょう。

ちなみに工事請負契約書の印紙税は、一般的な契約書の印紙税額に比べて軽減措置が取られています。 その印紙税額は、以下の通りです。

出典:国税庁ホームページ「建設工事請負契約書の印紙税の軽減措置

8. まとめ

いかがでしたか?
工事請負契約書について、知りたかったことがわかったかと思います。
ではあらためて、記事の要点を振り返ってみましょう。

◎工事請負契約書とは、「発注者」が何らかの工事を業者=「受注者」に依頼した際に、工事の内容や工期、請負代金などを細かく取り決める契約書

◎工事請負契約書が必要な3つの理由は、
 ・一方に不利な契約を結ばないため
 ・工事内容を明確化して認識を共有するため
 ・トラブルや紛争を未然に防ぐため

◎工事請負契約書に記載する必要事項14項目(=法定記載事項)は、
 ①工事内容
 ②請負代金の額
 ③工事着手の時期/工事完成の時期
 ④請負代金支払時期・方法
 ⑤工事の延期・中止の申し出があった場合の工期の変更、請負金額の変更、損害の負担とそれらの算定方法
 ⑥不可抗力による工期の変更、損害の負担とその算定方法
 ⑦価格の変動・変更に基づく請負金額/工事内容の変更
 ⑧工事により第三者が損害を受けた場合の賠償金負担
 ⑨注文者が工事に使用する資材や建設機械などを提供する場合、その内容と方法
 ⑩注文者による検査の時期・方法/引渡しの時期
 ⑪完成後の請負代金の支払の時期・方法
 ⑫契約不適合責任とそれに対する保証保険契約を締結する場合はその内容
 ⑬履行の遅滞、債務不履行があった場合の遅延利息、違約金その他の損害金
 ⑭契約に関する紛争の解決方法

◎工事請負契約書を作成する際の5つのポイントは、
 ・工事遅延の違約金を明記する
 ・不可抗力によって工期を延長する場合について条件などを明記する
 ・追加工事代金が発生する場合について条件などを明記する
 ・近隣からのクレーム対応について明記する
 ・地中障害物を発見した場合どうするかを明記する

◎工事請負契約書を締結する際の、建設業法に則った5つの注意点は、
 ・現場代理人を選任する場合、注文者に通知が必要
 ・請負代金は原価割れしてはいけない
 ・不当に短期の工期を設定しない
 ・見積りには工事内容・日数の内訳を明示する
 ・注文者の承諾なく「一括下請負」にしない

以上を踏まえて、あなたが抜け漏れなく工事請負契約書を作成、締結できるよう願っています。

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